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経営顧問が見る生産性向上の成功事例と業界別の取り組み

少子高齢化による人手不足や働き方改革への対応など、日本企業の多くは生産性向上が喫緊の課題となっています​。        こうした課題解決において、自社に外部の知見を取り入れる経営顧問の存在も注目されています。                実際、政府主導の事例集では、トヨタ自動車など大手製造業の専門家のアドバイスを受けた異業種企業が劇的に生産性を向上させたケースが報告されています。本記事では、大企業から中小企業まで生産性向上に成功した具体的事例を紹介し、建設業・不動産業における取り組みや、業界横断で得られる教訓についてまとめます。

生産性向上に成功した企業事例【大手企業・中小企業】

まずは生産性向上に成功した企業の具体例を、大企業と中小企業それぞれから見てみましょう。経営環境や業種は異なっても、生産性を上げるためのヒントが各事例に共通しています。

大手企業の事例:トヨタ自動車の「カイゼン方式」

生産性向上の成功例として真っ先に挙げられるのが、トヨタ自動車のカイゼン方式(改善活動)です。同社の生産現場ではかつて、無駄・ムラな作業や、工具の配置が定まらず現場が散らかるといった問題が散見されました​。そこで、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底や現場からの意見吸い上げによる業務見直しを実施し、ライン上のムリ・ムダ・ムラを排除しました​。         この現場主体の改善によって工場の生産効率は飛躍的に向上し、トヨタの手法は「トヨタ生産方式」として世界中の企業に採用されるようになりました。経営顧問としても有名なトヨタの事例が示す教訓は、トップダウンだけでなくボトムアップの現場知見を活かすことの重要性です​。

中小企業の事例①:老舗工場の設備刷新による効率化

高知県のとある製紙加工工場では、主力商品の高付加価値ティッシュ(ローションティッシュ)を旧式設備で生産していたため、本来2名で回せる工程に4名を割かなければならず生産性が低下していました                           この工場では思い切った設備投資による機械の新式化を行い、従来手作業だった部分を自動化した結果、必要人員を4人から2人に削減できました。 人件費の大幅削減とともに生産量あたりの労働投入を減らすことに成功し、生産性向上を実現しています​。     この事例は、中小企業でも設備刷新と自動化によって生産効率を高められる好例と言えます。

中小企業の事例②:業務のIT化・自動化による時間創出

社員数名規模の映像コンテンツ制作会社、株式会社エアグラウンドでは、全社員が制作・マーケティング・営業まであらゆる業務を兼務していたため一人当たりの負荷が高く、コンテンツ品質の低下や慢性的な長時間労働が課題となっていました​。         そこでマーケティング部門にITツールを導入し一部業務を自動化することで、人手をかけずに集客できる仕組みを構築し、社員が本来注力すべき制作業務に集中できる環境を整えました。この結果、残業の削減とコンテンツ品質の向上を同時に達成し、生産性を高めています​。人手不足を補うIT活用は、特に少数精鋭の企業にとって有効な戦略であり、経営顧問が提案する施策としても典型的です。

中小企業の事例③:個人店舗の業務見直しによる効率アップ

地方で個人経営のレストラン「貝の家」では、メニューの多様化に伴いフードロス(食材廃棄)が増加しがちだったほか、店内のレイアウトが非効率で一人では配膳に手間取る状況でした。オーナーは経営顧問的な視点でデータを分析し、注文の少ないメニューを思い切って廃止するとともに、ホール動線を見直してセルフサービス化できる部分(例:水やドリンク)を導入しました​。       これにより食材コストの削減従業員1人当たりのサービス提供エリア拡大を実現し、少人数でも回せる店舗運営に改善されています​ このように、商品構成や業務フローの見直しによって生産性を上げた例は小規模事業者にも当てはまり、専門家の助言が有効に働いたケースと言えるでしょう。

中小企業の事例④:小売店の集中生産によるコスト削減

高知県の土佐山田ショッピングセンターでは、惣菜コーナーの各店舗(3店舗)がそれぞれ店内調理を行っていたため、人件費と材料ロスがかさみ収益率が低迷していました​。そこで発想を転換し、惣菜調理を担う集中キッチン(工場)を新設して一括生産する方式に切り替えます​。工場では調理工程の自動化も進め、各店舗の調理人員を削減するとともに食材原価を統制した結果、人件費と材料費の大幅カットに成功しました。その効果もあり売上高も10%アップし、利益率も改善しています​。この事例は、業務の集約化と標準化によって生産性と収益を同時に向上させた好例であり、特に多店舗展開する企業にとって示唆に富む内容です。

建設業における生産性向上の取り組み事例

建設業界は慢性的な人手不足や長時間労働、「3K(きつい・汚い・危険)」といった課題を抱えています。しかし近年、国土交通省主導の**「i-Construction」など生産性革命プロジェクトも相まって、ICT活用による効率化や働き方改革**が中小建設企業にも広がっています。以下では、建設業における具体的な生産性向上事例を紹介します。

  • 施工管理のICT化による業務効率化: ある建設企業では、施工管理アプリとクラウド共有を導入し、現場の写真記録・図面メモを電子化しました。その結果、作業完了報告をタブレット上で漏れなく行えるようになり整理作業の時間を短縮できただけでなく、元請と下請け間で工事情報をクラウド共有することで書類受け渡しの手間を削減しています​。紙の帳票や手作業管理を廃止しデータ連携したことで、現場監督の負担が軽減され生産性向上に繋がった事例です​。
  • 測量・施工の自動化による劇的な時間短縮: 国土交通省の報告によれば、ある土木工事現場でドローン(UAV)による3次元測量ICT建機(GPS連動の重機)施工を導入したところ、測量工程が従来4日から0.5日へと1/8以下に短縮されました。       加えて、従来2人×週1.5日拘束されていた丁張り(墨出し)作業が不要となり、空いた人員を他作業に充てることで現場全体の効率が向上しています。また重機オペレーターの技能に頼らず均一な仕上がり品質を確保でき、安全面でも危険個所への立ち入り削減と重機接触リスク低減という効果が得られました​。これらは国主導のモデル事業として公開されたケースですが、現在では中小の建設会社も補助金や専門家支援を活用しつつ同様のICT化に挑戦し、生産性向上を果たす例が増えています。
  • 働き方改革と業務シェアによる労働生産性向上: 株式会社キョウエイ(愛知県)は平均年齢32歳という若い社員で構成され13期連続増収を続ける建設会社です。同社では社員のワークライフバランス向上を重視し、部署を超えた業務シェアリング体制を構築しています。繁忙期には総務部が工事部門の書類作成や日程調整を手伝い、「毎日19時までに全社員が退社できる」ことを目標に掲げました​。このような社内リソースの柔軟活用と業務分担の工夫により、長時間労働の是正と人材定着に成功し、それが若手人材の採用増加や企業の持続的成長につながっています。建設業では従来「現場は現場、事務は事務」と分業しがちでしたが、社内の垣根を越えた協力体制づくりも生産性向上の重要なポイントだと分かる事例です。

不動産業における生産性向上の取り組み事例

不動産業界もまた、従来からアナログな紙業務や属人的な営業に頼る部分が多く、生産性向上の余地が大きい業界とされています​。 近年はITを活用した不動産テック(PropTech)や不動産DXの推進により、業務効率3倍・生産性2倍といった劇的な改善を遂げる企業も出てきました​。ここでは、不動産業の代表的な生産性向上事例を、大手と中小それぞれ取り上げます。

  • 大手不動産会社の事例:生成AIチャットの全社導入
    大手デベロッパーの三井不動産株式会社は、2023年に社内業務効率化のため自社特化型のAIチャットサービス「&Chat」を開発・導入しました​。これはOpenAIのGPT-4技術を活用した対話AIで、社内のあらゆる部門の従業員が安全に業務利用できるよう設計されています​。例えば「長文資料の要約」や「言語翻訳」「企画アイデア出し支援」等の機能により、これまで人手で行っていた情報整理や資料作成の時間を大幅に短縮しています。全社員に生成AIツールを行き渡らせることで日常業務の生産性を底上げした好例であり、ホワイトカラー業務にもDXを進める同社の姿勢は、不動産業に限らず多くの企業に示唆を与えています。
  • 中堅不動産会社の事例:物件情報登録の自動化による効率倍増
    福岡県を拠点とする不動産会社株式会社三好不動産では、自社で管理する多数の賃貸物件情報をポータルサイト等に掲載・更新する作業に膨大な人手と時間を費やしていました​。自社でシステム開発することも検討しましたがコスト面の課題が大きく、代わりに業務効率化ツール**「速いもんシリーズ」を導入したところ、1時間あたり10件程度だった新規物件登録数が20件以上に倍増しました​。 空室情報や物件条件をリアルタイムで更新できるようになったことで、お客様への提案スピードが上がり来店率・成約率の向上にもつながったといいます。また入力ミス防止や重複作業削減の効果で残業も激減し、社員の働き方も改善しました。このように、業務専用システムの活用により中堅規模の不動産会社でも業務効率を2~3倍に高めた**事例は各地で増えており、行政による契約電子化の解禁など追い風もあって業界全体でDXが進展しています​。

業界横断で見る生産性が特に上がった業界と学び

最後に、業界全体として特に生産性が向上した分野と、そこから得られる教訓をまとめます。どの業界にも共通するのは「従来のやり方を見直し、新しい技術や仕組みを取り入れること」が鍵だという点です。

  • 製造業:継続的改善(Kaizen)と自動化
    製造業は日本経済を牽引してきた基幹産業であり、その成功要因の一つが継続的な生産性向上にあります。トヨタに代表されるように、現場主導のムダ排除品質管理手法(TQM)、自動化・ロボット導入が功を奏し、戦後から現在に至るまで労働生産性を飛躍的に高めてきました。この業界横断的な学びとして、現場の創意工夫を積み重ね標準化する仕組みが企業文化として根付けば、長期的に見て大きな成果を生むことが示されています。
  • 物流・運輸業:IT連携と共同輸送による効率劇的向上
    トラック輸送など物流業界でも近年、生産性向上の著しい事例が生まれています。例えば複数社が連携してパレット(荷台)の共用システムを導入し、トラックへの積み下ろし時間を可視化・管理した物流ネットワークでは、労働時間を短縮しつつ生産性を44%も向上させる成果が報告されています。また従来は空きスペースが多かった積載率も向上し、ドライバーの効率運用が可能となりました​。このように、業界内外の企業間連携ITを介した情報共有は物流効率化の鍵であり、他の業種でもサプライチェーン全体で無駄を省く発想が重要です。
  • サービス業(飲食・宿泊業等):業務プロセス改革と多能工化
    人手に頼りがちなサービス業でも、工夫次第で大きな生産性向上が可能です。宿泊業のケースでは、客室清掃やフロント業務にタブレット端末やチャットアプリ(LINE)を導入し、従業員が1人で3役をこなす応援体制を構築することで、労働時間を15~20%削減し人手不足を解消したホテルがあります​。また外食チェーンでは、注文データ分析から不人気メニューを削減することでフードロスを減らし、さらには店舗内作業の標準化従業員教育の強化によって売上増加に結びつけた事例もあります。サービス業の生産性向上から学べるのは、顧客ニーズの変化に迅速に対応し、業務の無駄を徹底的に見直すことの重要性です。これは経営顧問が現場を診断して改善提案を行う際にも、まさに着目するポイントと言えるでしょう。
  • 専門サービス業(介護・医療等):ツール活用と役割分担の最適化
    介護業界の例では、服薬ボックスなどの新ツール導入と業務フロー分析に基づく職員の役割・手順の見直しによって、生産性を33%向上させた介護施設があります​。具体的には、薬の受け渡しミス防止と在庫管理の効率化を図りつつ、ヘルパーとサービス提供責任者の情報共有を密にして優先度判断を明確化した結果、売上の増加と生産性15%向上を達成しています。高齢化が進む日本において介護・医療分野の効率化は社会的にも急務であり、これらの事例は現場スタッフの負担軽減とサービス品質維持を両立させるヒントとなります。ITツールと業務設計の見直しは、専門性の高い分野でも生産性向上に有効であることが確認できます。

まとめ:経営顧問の視点で生産性改革を推進しよう

企業規模や業種を問わず、生産性向上の鍵となるのは「現状を分析し、ムダをなくし、必要な変革を実行する」という普遍的なプロセスです​。各事例に共通するのは、データに基づいた意思決定や現場の声の活用、新技術の積極導入、組織横断の取り組みなど、経営資源を有効活用するための創意工夫と言えます。自社だけでは発見しづらい課題や解決策も、第三者である経営顧問の客観的な視点を取り入れることで見えてくるものがあります。実際、政府の**「業務改善助成金」など公的支援策でも、生産性向上のためコンサルティング(経営専門家の助言)を受ける費用**を補助する仕組みが用意されており​、専門家の知見を活用することが推奨されています。

貴社においても、生産性向上の成功事例で示された取り組みをヒントに、自社の業務やビジネスモデルを見直してみてください。その際には経営顧問のような外部の専門家の力を借りることで、社内に新たな視点をもたらし、変革を加速させることができるでしょう。日々の改善の積み重ねと大胆な改革施策の双方をバランスよく取り入れ、持続的な生産性向上によって競争優位を築くことが、これからの時代の成長戦略の要となります。

参考資料・外部リンク

社長の仕事は社員全員ができるようにするのが理想の会社のカタチ  YouTube撮りました。ご視聴下さい。

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